{flexclust} + DTW で 時系列を k-means クラスタリングする
概要
下の記事のつづき。下の記事では DTW (Dynamic Time Warping) 距離を使って階層的クラスタリングを行った。続けて、 DTW 距離を使って 非階層的クラスタリング (k-means法) を試してみる。
stats::kmeans
では任意の距離関数を利用することはできないため、任意の距離関数が利用できる {flexclust} というパッケージを使うことにした。
補足 DTW についてはこちら。
動的時間伸縮法 / DTW (Dynamic Time Warping) を可視化する - StatsFragments
インストール
install.packages('flexclust') library(flexclust)
{flexclust} の使い方
サンプルデータは前回記事と同一。 まずは既定 (ユークリッド距離) で k-means してみる。サンプルデータは行持ちでわたす必要があるので転置する。
クラスタリングした結果は TSclust::cluster.evaluation
を使って正分類率を算出して評価する。そのため、 {TSclust} もロードする。
library(TSclust) # クラスタ数は 3 res = kcca(t(data), 3) cluster.evaluation(rep(c(1, 2, 3), rep(N, 3)), res@cluster) # [1] 0.7705387
任意の距離関数で k-means する場合は、kcca
の family
オプションで、 kccaFamily
インスタンス化した距離関数を渡してやればよい。ここでは、既定の方法と同じ flexclust::distEuclidean
を距離関数として渡してみる。
res = kcca(t(data), 3, family = kccaFamily(dist = distEuclidean)) cluster.evaluation(rep(c(1, 2, 3), rep(N, 3)), res@cluster) # [1] 0.7705387
補足 ここではたまたま 1回目 / 2回目の正分類率が同じだったが、乱数 / 中心点の初期値によっては正分類率が異なることもありうる。
{flexclust} に任意の距離関数を渡す
DTW を使って k-means するためには、上記の distEuclidean
を参考にして距離関数を定義してやればよさそうだ。どのような定義であればよいのか調べるため、flexclust::distEuclidean
の実装をみてみる。引数と返り値は、
x
: 入力データ (次元は データ数 x データの長さ)centers
: 現在のクラスタの中心点 (次元は クラスタ数 x データの長さ)z
: 各入力データと各クラスタの距離 (次元は データ数 x クラスタ数)
distEucledean # function (x, centers) # { # if (ncol(x) != ncol(centers)) # stop(sQuote("x"), " and ", sQuote("centers"), " must have the same number of columns") # z <- matrix(0, nrow = nrow(x), ncol = nrow(centers)) # for (k in 1:nrow(centers)) { # z[, k] <- sqrt(colSums((t(x) - centers[k, ])^2)) # } # z # } # <environment: namespace:flexclust> # x として渡ってくるもの (データ数 x データの長さ の行列) # サンプルの場合、実際は 60行目 / 20列目までデータあり [,1] [,2] [,3] [,4] [,5] [,6] [,7] [,8] [,9] U1 -0.6327521 2.8410958 3.4529034 3.76949256 4.306223 5.2242329 1.305026 3.493067 8.0427642 U2 -0.9945734 3.4368117 -0.9907990 2.60606620 1.453351 0.8575501 2.541472 1.869034 0.6731607 U3 0.7014436 0.9778474 0.5219079 3.13321606 3.984465 3.8435608 3.707534 4.780511 7.7889760 # center として渡ってくるもの (クラスタ数 x 系列の長さ の行列) # サンプルの場合、実際は 20列目までデータあり [,1] [,2] [,3] [,4] [,5] [,6] [,7] [,8] D3 0.62595969 1.1235099 1.592674 -0.949247 -0.8132157 -2.0273653 -4.4877420 -5.137003 N17 -0.05983237 0.2078591 1.261035 1.826098 1.4504397 2.3426289 3.7686407 3.463603 N4 -1.52153133 -2.0982198 -1.930059 -4.379938 -2.9796999 -0.9948817 0.4933508 -3.084777 # z として返すべきもの (データ数 x クラスタ数 の行列) # サンプルの場合、実際は 60行目 までデータあり [,1] [,2] [,3] [1,] 69.75362 16.51187 44.71353 [2,] 71.45904 18.28978 45.20475 [3,] 57.58485 9.22195 32.93481 [4,] 74.50569 21.34163 48.72438 [5,] 74.53808 20.40498 49.45025 [6,] 66.04604 14.45167 40.60733
形式がわかったので、 TSclust::diss.DTWARP
を利用して同様のロジックを作成する。
distDTWARP <- function (x, centers) { if (ncol(x) != ncol(centers)) stop(sQuote("x"), " and ", sQuote("centers"), " must have the same number of columns") z <- matrix(0, nrow = nrow(x), ncol = nrow(centers)) for (k in 1:nrow(centers)) { z[, k] <- apply(x, 1, function(x) diss.DTWARP(x, centers[k, ])) } z }
いざ実行。
res_dtw = kcca(t(data), 3, family = kccaFamily(dist = distDTWARP))
、、、。
、、、。
、、、反応ないな、、、。
動いていることを信じて処理時間を計ってみる。
res_dtw = kcca(t(data), 3, family = kccaFamily(dist = distDTWARP)) # ユーザ システム 経過 # 1142.323 44.924 1306.208 cluster.evaluation(rep(c(1, 2, 3), rep(N, 3)), res_dtw@cluster) # [1] 0.7653292
なんだこれは、、、。遅いし あんま結果もよくない。
{flexclust} に任意のクラスタ中心点更新関数を渡す
調べてみると、どうも kccaFamily
に原因がありそうだ。 kccaFamily
には 距離関数 dist
のほかに、クラスタ中心点の更新に使う関数 cent
が渡せる。ここで、dist
には関数を指定 / cent
には何も指定しない場合、kccaFamily
では以下の関数 centOptim
を使ってクラスタ中心点を更新する。DTW は 普通の距離関数に比べると計算コストが高いため、この optim
での最適化に非常に時間がかかっていたようだ。
centOptim <- function (x, dist) { foo <- function(p) sum(dist(x, matrix(p, nrow = 1))) optim(colMeans(x), foo)$par }
クラスタ中心点の更新処理については ユークリッド距離の最小化 or クラスタの中央値で行うようにしてみる。感覚的には、これらの方法で更新されたクラスタの中心点を使った場合も、クラスタ内の各要素 / 中心点の DTW 距離は小さくなるはずだ。
# ユークリッド距離最小となるように中心点更新 cent <- function(x) centOptim(x, dist = distEuclidean) res_dtw_ceuc <- kcca(t(data), 3, family = kccaFamily(dist = distDTWARP, cent = cent)) # ユーザ システム 経過 # 3.374 0.118 3.942 cluster.evaluation(rep(c(1, 2, 3), rep(N, 3)), res_dtw_ceuc@cluster) # [1] 0.7638889 # クラスタの中央値で中心点更新 cent <- function(x) apply(x, 2, median) res_dtw_cmed <- kcca(t(data), 3, family = kccaFamily(dist = distDTWARP, cent = cent)) # ユーザ システム 経過 # 5.926 0.209 7.039 cluster.evaluation(rep(c(1, 2, 3), rep(N, 3)), res_dtw_cmed@cluster) # [1] 0.7638889
試してみると、処理時間はかなり短くなった。
比較
k-means 法でのクラスタリングは初期値の影響を受けるため、100回ほどループさせて比較してみた。 比較したのは 以下の3手法
Euclidean
: ユークリッド距離で k-meansDTW (Euclidean)
: DTW で k-means、クラスタ中心点は ユークリッド距離最小となるよう更新DTW (median)
: DTW で k-means、クラスタ中心点は 中央値で更新
横軸に正分類率 / 縦軸に頻度として頻度分布を描いてみた。ベストな値は DTW (Euclidean)
で出ていたが、顕著な差があるようには見えない。ループ回数を増やせば / 元データがちょっと違えば逆転しそうである。
ただ、DTW (Euclidean)
の結果はばらつきが少ないようには見える。
まとめ
{flexclust} を使って DTW 距離で k-means してみた。その際、クラスタ中心点の更新を既定 ( DTW距離 +
optim
) で行うのは処理速度の点で現実的でない。クラスタ中心点の更新を ユークリッド距離 or 中央値で行うことで処理速度は改善する。しかし、上記の方法/データではユークリッド距離での k-meansと比較して 劇的な差はみられなかった。確かめられていないのは、
補足
こちらの本に DTW での k-meansというトピック (時系列ではなく手書き文字についてだが) があるようだ。高い、、、。
Developing Concepts in Applied Intelligence (Studies in Computational Intelligence)
- 作者: Kishan G. Mehrotra,Chilukuri Mohan,Jae C. Oh,Pramod K. Varshney,Moonis Ali
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2015/06/03 追記: 直近でブクマいただいていたので補足を。DTW は ユークリッド距離と比べると計算量が多いため、 k-means のように距離計算を複数回 繰り返すアルゴリズムとはあまり相性がよくない。今回、自分はトレンドによって時系列を分類したかったのだが、最終的には上昇/下降など 解釈可能なパターンをいくつか教師データとして用意して 最近傍法を使って分類した (距離計算の回数を減らし、かつ 解釈できるパターンに分類する必要があったため)。